今回のお話もその勉強会でのものです。
茶のしずく石鹸により、小麦アレルギーが誘発されてしまうという事故が
2010年頃から発生し、翌2011年には茶のしずく石鹸の全面回収という結果に至りました。
現在マスコミなどの報道はもっぱら集団訴訟とその展開が中心となっていますが、
アレルギーの診察をする人間としてはその患者さん達についてのまとまった情報を知りたいと思っていました。
今回、医療者側で中心となって調査を行っていた、藤田保健衛生大学皮膚科の松永教授の講演がありましたので、
簡単にまとめてみたいと思います。
なお、本項目は筆者のメモを中心にまとめたものであり、公式見解ではありません。
誤記や勘違いによるデータの間違いが含まれる可能性があります。
正確な情報を知りたい方は正式な文献や研究者に確認を取るようにしてください。
なお、この問題については近い将来にまとめたものについて一般のかたを対象にした発表の機会があるかもしれない
とのことでした。
最初の患者さんの人数についてです。
今年の冬の時点で患者さんの数は約2000人強。全国に存在します。
多くは成人の女性が中心です。女性の発生が95%以上を占めるとのことです。
しかし、子どもの患者さんも数十名おり、子どもでは男女差が無いとのことでした。
まあ、普通男性は石鹸をわざわざ取り寄せることなどありませんからね。自らを省みてもそう思います。
子どもに関してはお母さんがきっと使ってあげたのでしょう。
まあ、普通子どもは石鹸をわざわざ(以下略)
なお、石鹸の販売数は4000万個以上、使用者はメーカーが把握しているだけで400万人以上いるとのことです。
成人女性の10人に1名が使用していると考えてもいいでしょう。
しかし、アレルギー症状が発生したのは使用者2800名に1名程度とのことでした。
大体1万分の4くらいの確率でしょうか。
・・・わかりにくいですね。サイコロを5回振った時に全部1の目が出来る確率よりも少し低いくらいです。
ただし、アトピー性皮膚炎では明らかにアレルギー症状が出やすいことがわかっているようです。
これはなぜか?
アレルギーの反応が最初に皮膚で起きたと考えられるからです。
石鹸ですから、毎日毎日顔の皮膚に接触します。
もともと顔面あ皮膚が薄いためにアレルゲンの吸収は体に比べて起こりやすいのです。
また、石鹸の界面活性剤で皮脂の減少が起き、皮膚のバリアが傷害される。
アトピー性皮膚炎のように湿疹になっている皮膚からはよりアレルゲンが入りやすくなる。
また、瞼の粘膜は皮膚よりもアレルゲンの吸収が良い。
ということで最初の症状は目のむくみで始まり、ついで顔の皮膚のトラブルとなっていったと考えられます。
次になぜ全身に症状が進展するようになったのかのお話です。
今回の茶のしずく石鹸のアレルゲンはグルパール19Sと呼ばれる蛋白質でした。
これは小麦を加水分解する事により出現する蛋白質ですが、
逆に言えば、小麦の中にも必ず含まれていることになります。
このグルパール19Sを顔から吸収し、アレルゲンと認識してしまうと、
お腹から入ってきた小麦に対してアレルギー反応を起こしてしまい、
腹痛や下痢などの腹部症状、ひいてはアナフィラキシーショックを起こしてしまうのです。
少し話が長くなったので診断、治療の話は次にしましょうか。
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