やけどの話、最後は大やけどについてです。
前の話にも書きましたが、大やけどと小やけどの区別は難しい物があります。
今回は入院が必要なやけどのお話だと思って下さい。
全身の数十%を超える大きなやけどの治療はとても大変です。
なぜか?ここまで大きなやけどになると、皮膚だけではなく、全身の問題になってしまうからなのです。
大きなやけどを受傷した場合、全身はショック状態になります。
この状態になってしまうと、血管から皮膚の下に全身の水分が移行してしまいます。
そうすると困るのは腎臓です。腎臓に流れる血液が減ると腎臓がおかしくなってしまうので、
腎臓からでるおしっこの量で治療を決めていく必要があります。
つまり、おしっこが出てこないと血液の量が少なく、危険というわけです。
そのために一生懸命水分を外から与えなければ行けません。
同様にタンパク質も血管から逃げ出してしまうので、輸血を一杯しなければいけないのです。
さて、そうしているうちに腎臓からおしっこが出てきました。
今度は皮膚の下の水分が一気に血管に戻ってきてしまいます。
こうなるとおしっこ、つまり腎臓の問題は落ち着いてくるのですが、今度は心臓と肺の問題が出てきます。
肺の中に水が溜まってきてしまうと呼吸がうまくいかなくなってしまうのです。
かといって、水を外から与えないと、やけどの皮膚から水が漏れてしまうので、水分が足りなくなってしまいます。
こうして、体の水分が多すぎても少なすぎてもいけないという、綱渡りの状態が続いていきます。
数日立ってくると、今度はバイキンの問題が出てきます。
死んだ皮膚をエサとして、バイキンが増殖してきます。
そのバイキンはそのままにしておくと血液を通して全身に広がっていきます。
そうなると大変なことになりますから抗生剤を使わなければいけません。
でも、今度はその抗生剤に抵抗力のあるバイキンが増えてくるので、抗生剤の種類を替えて・・・
とイタチごっこが始まります。
やけどから数日たったあとに急に調子が悪くなる場合があるのは、主にこのバイキンの問題が有るのです。
また、この頃からは皮膚の問題が出てきます。
多くは深い部分までやけどを追っていますので、その部分の皮膚はなくなります。
そうすると、他の場所から皮膚を持ってきて、移植してあげる必要があります。
同時に死んだ皮膚も取り除かないと、皮膚の移植は上手に進みません。
この手術も大変なものです。またそのためには麻酔をしなければいけませんが、
その麻酔の影響も当然考えなければいけません。
また、大量に出血しますので(皮膚を削り取るので仕方が無いのですが)
輸血も大量にする必要があります。
したがって、治療を続けるに当たり、元々の本人の体力も非常に重要なものとなります。
また、栄養失調になると、傷の治りにも影響するので、食事や栄養管理も大事になります。
大きなやけどの治療をするためにはこのようなポイントに気をつけながら、進めていく必要があるのです。
やけどのニュースを目にするたびに、本人と医療スタッフのがんばりに想いをはせるのです。
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