さて、今回は昨日から様々なメディアで話題になっている、京都大学皮膚科学教室による、アトピー性皮膚炎に対する内服薬(候補)
JTC801について、皮膚科医の立場から解説をしていこうと言う、(ある意味無謀な)試みです。
プレスリリースはこちら.
ニュースの記事だけでは非常にわかりにくいです。
多分、新聞記者の方もあまりよく理解していないのかもしれません。
そもそも・・・がわかっていないのではないでしょうか。
そもそも、皮膚の一番大事な役目は、皮膚の外と中を区分けすることです。
外界の成分が生体内に入ると、アレルギーの反応を起こします。
また、人間の構成成分が外に出ることも、問題となります。
特に問題になるのは水分です。
陸に上がった動物はいかに体内の水分を外に出さない様にするかが、きっと進化の大きな問題になったでしょう。
その大切な皮膚のバリア機能が破綻すると、湿疹が起こります。
特にアトピー性皮膚炎の病気の一部は皮膚のバリア機能の障害によるものということがわかってきました。
(もちろん、アレルギーも大きな原因になります。どちらが主で従かはまだわかっていないことも多いのですが。)
子どもにアトピー性皮膚炎が多いのも、皮膚のバリア機能が未熟だからと考えるとつじつまが合います。
しかし、その一部に、フィラグリンと呼ばれるタンパクの遺伝子異常を持っている人が入ることがわかってきました。
概ね、患者さんの1/3から1/2位の人がそうだと言われています。
なぜ、フィラグリンタンパクの異常がアトピー性皮膚炎を引き起こすのか?
これはフィラグリンが皮膚のバリア機能に重要な役目を持っているからです。
もともと、フィラグリンは皮膚の細胞の中で作られます。
細胞の中の骨の成分、ケラチンとともに皮膚のバリア機能を作り、
最終的には分解されて、天然保湿因子となります。これも皮膚のバリア機能の補助となるのです。
つまり、遺伝的な問題がありフィラグリンの作成量が減ると、皮膚のバリア機能が悪くなり、結果的に
アトピー性皮膚炎になりやすくなってしまいます。
・・・さて、ここまでの話で皮膚バリア機能障害の解決策は出てきたのではないでしょうか。
なんとかして、このフィラグリンのタンパクを増やしてあげれば、皮膚バリア機能の改善につながり、
ひいてはアトピー性皮膚炎の予防につながるということになるわけです。
今回の発表はある化学物質がこのフィラグリンの産生を進めるということなのです。
後日、論文を読んでみて、どのようにしてこの研究が進められたかを見ていきたいと思います。