わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

TEL050-3355-9592


〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F

被覆材

とびひには創傷被覆材とカットバンは使わないようにしましょう

あまり推奨はしていません。

そのココロは悪化するから。

 

まずとびひはなぜ起きるのかを考えてみましょう。

原因は細菌です。

細菌の出す毒素が皮膚の細胞の接着を溶かしてしまい、

結果的に皮膚が溶けて剥がれてしまう症状が出てしまうのです。

 

ですので、皮膚の表面の剥がれや剥けに対して

創傷被覆材を使用することで逆に温暖・湿潤環境が

形成されてしまい、逆に細菌の増殖が起こってしまうという

問題が出てしまうのです。

(被覆材の使用説明書にも同様の記載があるかと思います)

 

同様にカットバンもあまりおすすめはできません。

問題になるのは粘着剤の部分です。

この部分に細菌の感染が起こり症状の拡大が進んでしまうという

事態になるのです

 

したがって、とびひに感染したときには「蒸らさない」「ふやかさない」が

鉄則となります。

とびひの症状の部分はあえて隠す必要はないのですが、

隠したい場合にはガーゼを貼って紙テープで留めてあげる

というのはベストの対応の用に思えます。

隠すときには通気性は保つこと。ですね。

パイナップルのカモミールあえコンブ包み皮膚科医風

この原稿は第一出版株式会社より発行されている「栄養と職事ニュース」の中の「星霜」というコラムに執筆した原稿です。

第一出版株式会社より許可を得て、全文を掲載致します。

このような随筆形式の原稿を依頼される方はfc@wakaba-hifuka.comまでご連絡ください。

 

 

「パイナップルのカモミールあえコンブ包み皮膚科医風」

注:これは実在の料理ではありません。

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今回は皮膚科医が使う食材のお話です。と言っても外来で料理する訳ではありませんよ。

皮膚科で普段使っているクリームや絆創膏の中には
もともと食品に入っている成分を利用し、その化学的効果を期待している物がいくつかあります。
今回はそんなお話をしたいと思います。
酢豚にパイナップルを入れますか?

私はどちらでも構わない派です。パイナップルは取っておいて、最後にデザート代わりに
食べることが多いのですが、なかなか議論がつきない話題ではないでしょうか。

そもそも、なぜ酢豚にパイナップルを入れるのでしょうか。
これには諸説あるようですが、その理由の一つに
パイナップルに入っているタンパク質の分解酵素が肉を柔らかくするとの話があります。
中に含まれるブロメリンという酵素は、ある特定のアミノ酸を切断することが
知られており、そのために肉が柔らかくなるとの理屈のようです。
実際に、パイナップルを食べると、舌の表面や口の中がざらざらしたり、
時にひりひりするのはまさにその酵素により、粘膜の表面が溶けているからなのです。

同様に皮膚の表面も溶かしてしまえとばかりに製品化された軟膏があります。
「ブロメライン」という軟膏はそのブロメリンが含有されており、
やけどや褥瘡の表面にできた硬いかさぶたや
壊死した部分を溶かす作用があります。
ベッドサイドで褥瘡の傷に毎日塗っていると、
少しずつ壊死がした部分が柔らかくなっていきます。

余談ですが、口の中にカビや雑菌が繁殖してしまうカンジダ症や黒毛舌という病気にも
パイナップルは有効のようです。
だれか寝たきり患者さんの口腔ケアに応用してみてもらえないでしょうか…。
青い湿布の作り方

中世ヨーロッパや時代劇、ファンタジーを題材とした映画やテレビドラマの中で
けがをした時に「ぺたり」と貼られる湿布薬。
その表面の膏薬はきれいな青い色をしていることが多いですが、
実は現在でもこの青い薬が使われていること、知っていましたか?

青い色の元となるのは「アズレン」と呼ばれる色素。
名前もスペイン語で「青」を意味する「azul」から来ています。
コートダジュールという地名を耳にしたこともあるでしょう。
(スペルはCote d’Azurです)

人類との付き合いは古く、1万年以上も前から使われていたようです。
最初にアズレンは最初カモミールから抽出され、
その後、他の多くの植物にも含まれていることが判明しました。
面白いものでは、真っ青なキノコであるルリハツタケにも含まれているそうです。

この色素は、弱い消炎作用や浮腫の抑制、抗アレルギー作用など、
多彩な薬効を持つことから塗り薬や飲み薬としても使われています。
塗り薬は「アズノール」と呼ばれ、湿疹や外傷、やけどによる傷に
使われます。作用がマイルドなため、赤ちゃんの湿疹に使う皮膚科医が
多いようです。
また、このアズレンとグルタミンを混合したものは、飲み薬として使用されます。
「マーズレン」や「ハチアズレ」などの名前で処方され、胃炎やのどの炎症などの
比較的軽い症状に対して使われます。子どもの頃に、うがい薬で青い粉薬を使ったことが
ある人も多いと思いますが、その材料はじつはこのアズレンなのです。
昆布で血を止める?

例えば、顔面や指先を切ったときや激しい鼻血など。
出血が続き、いつまでたっても血が止まらない患者さんに出会うことがあります。
困り果てて、専門のWOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)に相談すると、
アルギン酸塩がシートになった被覆材を持ってきてくれます。
その被覆材を貼ってしばらくするとあっという間に止血され、
私たちはほっと一息つけるのです。

このアルギン酸塩。実は元は昆布などの海藻から抽出されたものなのです。
アルギン酸は多糖類の一つです。多くの水分を保持できるという特徴があります。
また、カルシウムが加わるとゲル化する事が知られています。
この性質を利用して作られたのが人工イクラ。
作り方は簡単。アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液の中に
一滴ずつ垂らすだけです。もちろん、普通に食べることもできます。

さて、傷口にこのアルギン酸塩が触れたらどうなるでしょうか。
まず、傷口の余計な水分が吸収され、ドロドロになります。
また、アルギン酸どうしをつないでいたカルシウムが放出されて、
血小板に作用し、血を止める役割を果たします。
傷を治す側から見れば、余計な水を吸収してくれて更に止血までしてくれるのですから
万々歳です。
唯一の難点はアルギン酸のシートは最終的にドロドロのデロデロになってしまうこと
でしょうか。

なお、アルギン酸塩のシートの開発には裏話があります。
開発は第二次世界大戦中のイギリスです。当時ドイツと戦争中のイギリスでは、
輸入される物資が片っ端から潜水艦に沈められていました。
当然包帯の原材料の木綿も輸入できなくなり、慌てて代用品として
海藻から包帯を作ろうとしたのです。
その包帯にこのような作用があることが判明し、その後世界中で使用される
ようになったのです。
まさに、必要は発明の母ですね。