今回は災害対応のお話です。
皮膚科的に少し考えてみることにしましょう。
昨今の集中豪雨、以前よりも凄さを増していますねえ。
お家も浸水のリスクを考える必要がありますが、それ以外にも、帰宅途中に
浸水に見舞われその中を歩いて帰ったとき、その後どうしたらよいかを考える必要がありますね。
足がびしょびしょでお家に帰る前に行ったほうが良いことがあります。
それは家族に連絡を取ること。
自宅でもあらかじめ準備をすることで被害を最小限に食い止めることができます。
ではその被害は何か?健康被害ですね。
つまり浸水した水はただの雨水ではありません。
雨水、下水の入り混じった水である可能性があります。
少なくとも一度側溝に入った水ですので、側溝内のさまざまな有害物質に汚染されていると考える必要があります。
また側溝内には動物の死骸などがありますので、病原微生物への暴露も考える必要があります。
そのようなモノを家に持ち帰るわけですから帰ってこられる側でも相応の対応をする必要があります。
なので、事前連絡からの準備は大事です。
では連絡された側は何をするかというと。
まずは玄関にバケツやビニールの大きな袋を準備してください。
可能ならざっと洗えるようにお湯/水を準備すること。
そしてお風呂場まで、床を歩かなくても良いようにお風呂場までタイルや防水シートを敷いておく。
最後にお風呂にお湯を張っておくこと。
以上は帰宅直後に行えるように準備することを推奨します。
可能であればアルコールで消毒する準備も必要です。
というのも時間が経てばその汚染物質は乾燥し、ホコリとなって舞うことになります。
そのリスクを下げる必要があるんですね。
ということで事前に準備をしてもらってから帰宅します。
帰宅して玄関先でまず行うこと。
脱いでください。
靴も、濡れたズボンも全部脱ぎましょう。
上半身も汚れたのであれば、汚水のついた服は全部脱ぎます。
そしてそばに置いたバケツなり、大きなビニール袋なりにしまい、
蓋をするかくくるかをして、汚水でそれ以上周囲を汚染しないようにします。
で、タオルや防水シートの上を歩いてそのままお風呂場へいきましょう。
そしてまずはしっかりとシャワーをして汚れを落としてください。
一般的に石鹸は1回使えば良いと思いますが、心配なら2回石鹸で洗いましょう。
その後湯船に入り、体を温めると良いかと思います。
湯船に入って行うことはまず汚水付着部に傷が無いかの確認です。
水虫、擦り傷、虫刺されなど、皮膚の一部に傷があればそこから感染を起こす可能性が
跳ね上がります。
同様にふやけて破れた皮膚についても要注意です。
湯船の中でゆっくりで良いので全身特に下半身はくまなく確認してください。
問題なければOK。
温まったら、まず湯船のお湯を抜き、浴槽内を洗剤で掃除し、もう一度シャワーで汚れと湯船のお湯を落として上がります。
その後は清潔な服を着て、汚水が付着した可能性があるところを消毒して回りましょう。
最後に寝る前に再度足を中心に皮膚のチェックを行います。
その頃にはふやけた皮膚も乾燥していると思いますので、再度傷の確認を行います。
(汚水の付着した洗濯物・靴への対応は専門の方の情報を確認してください。
こちらでは割愛します)
当日の対応はそれでOKです。
翌日以降ですが、
・もともと免疫の低下している方(糖尿病、ステロイド/免疫抑制剤内服、抗がん剤治療中など)
・汚水付着部に傷、虫刺され、水虫など皮膚ダメージが見られる方
・新たに皮膚になにか症状が出てきた方
は早く医療機関を受診することをおすすめします。
持病があり、定期的に通院している方はそちらの受診を検討してもよいですし、
皮膚科や形成外科、外科などいわゆる皮膚や傷の対応ができる医療機関を受診しても構いません。
免疫力が低下している方であれば状況によっては予防的に抗生剤などを飲むことも考えられます。
またそれぞれの皮膚症状がある方は、感染症を注意しつつそれぞれの皮膚症状を抑える必要があります。
なお、受診時には汚水に触れたことはきちんとお伝え下さい。
その情報が有るか無いかによって医療従事者の感染症対応が変わってくる大切な情報ですので、
状況の説明をしていただけるとありがたいです。
後は医療の方で対応という形になります。
感染症ですが、吸い込みからの呼吸器感染症もありますが、まず最初に考えるべきは
皮膚局所からの感染症です。
一般の方であれば大きな問題になることがありませんが、特に糖尿病などの方では
対応が遅れると切断レベルの話に進行することがありますから注意が必要です。
本当に怖いんですよ…
最後に繰り返しになりますが、
浸水した水はただの雨水ではありません。有害物質、病原微生物を含んだ汚水です。
きちんと対応し、その後の感染症もしっかりと予防してくださいね。