ディオバンの、論文の改ざん問題はなかなか落ち着かないようです。
まとめはさまざまなサイトで見ていただければ良いのですが、
ディオバンの医師主導治験で行われた、データ改ざんにより、
高血圧関連イベントが不正に低く見積もられたことが問題です。
皮膚科医として、ディオバンは今後処方する可能性は非常に低いのですが、
この件について何度かノバルティスさんからお話を伺うことが出来ました。
というのも、ディオバンに問題に関してはもちろん元社員とされる方に問題が有るのはもちろんですが、
ノバルティスさんが扱っている他の薬剤、特に自分が処方する可能性のある薬剤でも同様の問題が有るかが
知りたかったのです。
今回、ノバルティスさんから話を訊くことが出来たのは
その元社員の方は、ディオバン以外の試験には関わっていなかった
との情報のみでした。
ここで、あれあれとおもったので、詳しく話を聞きましたが、
皮膚科関連の薬剤で同様のデータ改ざんが行われたかについては資料がないそうです。
更に聞いてみると、まったく検討していない。
との返事が帰ってきました。
さて、ここで問題が浮かんできます。
まず、1つ目。
この元・社員という方は、まったく今まで同様の研究に携わることなく、いきなりディオバンの試験に関与し、
初めての研究で大きなデータの改竄に関与し、そのまま退職したのでしょうか。
他の業界では普通は小さな研究や試験に何度か参加しながら、徐々に大きな研究に関与するものでは無いでしょうか。
また、最初の研究でいきなりデータの改竄に関与するものでしょうか。
(心理学的には最初はより小さなことから始まるのでは無いでしょうか)
この方は、最初から研究開発部門にいたのか?営業部門から移ったのか?以前は他社にいたのか?
もしも他社にいたならどんな会社でどこでどんなことをしていたのか?
非常に心配になってしまいます。
なお、この件に関しては後日調べた結果を持ってくるとのことでした。
次に2つ目。
果たして他の薬剤は問題ないの?
という心配が出てきます。
このような事件が起きたということは、ノバルティスさんは他の製薬メーカーよりも
同様の事件が隠れている可能性は高いと考えてしまいます。
それを心配しているのですが、返事はまさかの「調べていない」でした。
統計的調査でもやってもらえると良いのですが、どうもその様子も無さそうです。
ここまで来ると、ノバルティスさんの姿勢にも疑問を感じてしまいます。
結局、「ディオバンの臨床試験問題」のみを解決することしか考えていないのではないかと疑念が生じてしまいます。
私は心配しているのは、「すべての薬の臨床試験そのものに」対しての疑いの目でみてしまう。
ということなのですが、あまり積極的にその問題に対処しているように見えないのです。
現在の薬剤というものは非常に複雑な試験の上に成り立っています。
今回は医師主導型治験という問題であり、ディオバンによる降圧作用そのものには問題はなかったのです。
しかし、国に認可申請するときにデータに意図的な変更が加えられていたら、それを指摘することは専門家でも難しいものです。
当然薬を飲んでいる一般の患者さんは、医師が勧めるからその薬をのむわけです。
今回、その医師が確認するデータが信頼の置けるものではないかもしれない。
自分が飲んでいる薬が信頼の置けるものでは無いかもしれない。
そのように思わせるに至ったところに大きな問題が含まれているのがわかってしまった。
また、問題が起きた時に製薬会社が自ら解決することができない。
ということもはっきりと見られてしまいました。
このことは今後大きな問題になっていくのでしょう。
何を信じていけば良いかわからない世界が来ているのかもしれません。
Believe no oneと言われるのは、ドラマの中だけで十分なのですが。