わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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治癒

アトピー性皮膚炎は「治癒した」とはいわないの?

はい、うちではあえて言わないようにしています。

 

ということで今回はアトピー性皮膚炎のお話です。

多くの病気では治ったと言うのに、どうしてアトピー性皮膚炎で治ったという言い方はしないのか?

について簡単に解説します。

病気のガイドラインでも「寛解」という言葉を使っていますよね。

こちらの理由についても合わせて解説します。

 

寛解とは簡単に言うと、症状がなくなって日常生活に問題がなく過ごせるようになること

とでも言えばよいのでしょうか?

ではこの症状がなくなる=治癒ではないのか?

無いんです。

 

そもそもアトピー性皮膚炎の原因の一部には遺伝的な要因が関連していると考えられています。

アレルギーの体質しかり、皮膚の弱さの体質しかり。今後はもしかするとかゆみの体質が見つかるかもしれません。

ただこの体質は何かというと、遺伝子です。

生まれつきアレルギー反応が強い。生まれつき皮膚が弱いということを表現しているわけですね。

ですので、例えば湿疹がもしもなくなったとしても、このような体質が残っている限り、

できやすい皮膚はそのまま残されているわけです。

そして、何かの拍子に一気に症状が出てきてしまうわけなんですねえ。

 

実際にこのことは外来で診察をしているとときに見かけます。

湿疹がある日出たから受診したという患者さんの診察をしているとその湿疹がどうもアトピーっぽい。

そこで詳しくお話を聞いてみると小学生の時まで実際にアトピー性皮膚炎があった。

その後症状はなくなっていたので治ったと思っていた。

ということがよくあるお話だったりするのです。

 

つまり、アトピー性皮膚炎の湿疹の症状はなくなったとしても、

できやすい遺伝的な素因はそのまま変わらず残っているので、それがちょっとした刺激で

再度皮膚の表面に顔を出してきた

ということが起きたわけですね。

 

つまり、アトピー性皮膚炎の症状は確かに出たり引いたりするのですが、

その下、水面下での体質というのはずっとうねりとして残っており、何らかの拍子に

皮膚表面に現れる。

ということはあるんです。

 

ですので、そこをよく知っている皮膚科医は決してアトピー性皮膚炎が治癒したとは言いません。

寛解した。また「今回のこの症状は治った」という言い方はするのですがね。

 

本当にアトピー性皮膚炎というのは一筋縄ではいかないのですよねえ…

難しいです。

円形脱毛の「治っています」はどこを見ているの?

本日は円形脱毛症のお話。特に治療についてです。

 

円形脱毛症の治療をしているとき、治っています/治っていませんという位置が

患者さん本人の指摘とこちら側の指摘が微妙に異なっていることがよく見られます。

それは多分見ているものが違うからなんですよねえ。

 

では、患者さんの「治っている」はどこを見ているのか?

それは髪の毛が生えてきているかどうかです。

そりゃあそうだと思うかもしれませんが、それを厳密に見ていくと、

「しっかりとした太い毛が」「それなりの長さ生えてきて」「頭皮が隠れること」

という3条件を満たして初めて生えてきている。という認識になるように思えます。

 

逆に、皮膚科医の治っている所見というのはもっとシンプルで、

「毛穴から髪の毛が顔を出しているか」

だけなのです。

 

この差が起きるのはどうしてなのか?

これはもう仕方の無いことなのですが、

患者さんが気にするのは見た目の話になるわけです。

見た目として円形脱毛が見えなくなるには髪の毛で頭皮が隠れなければいけません。

それに対して皮膚科医が気にしているのは、

円形脱毛症の異常な自己免疫反応が消えているかどうか?

なのですよね。

 

円形脱毛症で何が起きているかは実ははっきりとはわかっていませんが、

髪の毛の構成タンパクのなにかに対して自分の身体が自己免疫を起こしており、

白血球やリンパ球が髪の毛を攻撃し、そのために毛が細くなり、結果として抜けていく。

というように理解をしています。

そのため、自己免疫反応が起きているか落ち着いているのかが大事なポイントになってきます。

その時落ち着いているというポイントが、毛穴からきちんとした髪の毛が顔を出しているかという面なのです。

もちろん毛穴から髪の毛が出ていないければダメですし、

顔を出している毛の状況も確認し、きれいな形で伸びているということを確認する必要もあります。

ただきれいな毛が伸びていれば、現時点では自己免疫反応は十分に抑えられているということも確認できます。

つまり、今後は良くなってくることが十分に期待できるということがわかるのです。

 

このように、円形脱毛症が治ってきているかを確認するポイントは患者さんと治療者とでは微妙に異なるのですね。

なので、患者さんが治っていないように思えるポイントを、皮膚科医が「治っています」というふうに説明することも

往々にして出てくるのです。

簡単に言えば、皮膚科医は「今後落ち着いて髪の毛が生えてきますね」ということを「治っている」と表現し、

患者さんは「髪の毛が生えて症状がなくなった」のを「治っている」と表現するんですね。

皮膚科医は未来を見て治療効果を判断し、患者さんは過去を見て治療効果を判定しているといっても良いでしょう。

 

同じ病気、同じ言葉でもそれぞれ見ているものが微妙に違うというのも、

面白い話ではないでしょうか?