本日は円形脱毛症のお話。特に治療についてです。
円形脱毛症の治療をしているとき、治っています/治っていませんという位置が
患者さん本人の指摘とこちら側の指摘が微妙に異なっていることがよく見られます。
それは多分見ているものが違うからなんですよねえ。
では、患者さんの「治っている」はどこを見ているのか?
それは髪の毛が生えてきているかどうかです。
そりゃあそうだと思うかもしれませんが、それを厳密に見ていくと、
「しっかりとした太い毛が」「それなりの長さ生えてきて」「頭皮が隠れること」
という3条件を満たして初めて生えてきている。という認識になるように思えます。
逆に、皮膚科医の治っている所見というのはもっとシンプルで、
「毛穴から髪の毛が顔を出しているか」
だけなのです。
この差が起きるのはどうしてなのか?
これはもう仕方の無いことなのですが、
患者さんが気にするのは見た目の話になるわけです。
見た目として円形脱毛が見えなくなるには髪の毛で頭皮が隠れなければいけません。
それに対して皮膚科医が気にしているのは、
円形脱毛症の異常な自己免疫反応が消えているかどうか?
なのですよね。
円形脱毛症で何が起きているかは実ははっきりとはわかっていませんが、
髪の毛の構成タンパクのなにかに対して自分の身体が自己免疫を起こしており、
白血球やリンパ球が髪の毛を攻撃し、そのために毛が細くなり、結果として抜けていく。
というように理解をしています。
そのため、自己免疫反応が起きているか落ち着いているのかが大事なポイントになってきます。
その時落ち着いているというポイントが、毛穴からきちんとした髪の毛が顔を出しているかという面なのです。
もちろん毛穴から髪の毛が出ていないければダメですし、
顔を出している毛の状況も確認し、きれいな形で伸びているということを確認する必要もあります。
ただきれいな毛が伸びていれば、現時点では自己免疫反応は十分に抑えられているということも確認できます。
つまり、今後は良くなってくることが十分に期待できるということがわかるのです。
このように、円形脱毛症が治ってきているかを確認するポイントは患者さんと治療者とでは微妙に異なるのですね。
なので、患者さんが治っていないように思えるポイントを、皮膚科医が「治っています」というふうに説明することも
往々にして出てくるのです。
簡単に言えば、皮膚科医は「今後落ち着いて髪の毛が生えてきますね」ということを「治っている」と表現し、
患者さんは「髪の毛が生えて症状がなくなった」のを「治っている」と表現するんですね。
皮膚科医は未来を見て治療効果を判断し、患者さんは過去を見て治療効果を判定しているといっても良いでしょう。
同じ病気、同じ言葉でもそれぞれ見ているものが微妙に違うというのも、
面白い話ではないでしょうか?