今回は前回のお話の続きです。
予告のとおり、汗疹のタイプ別分類とそれぞれの対処法についてお話をしていきましょう。
まずは注意事項です。
こちらのタイプ別分類は正式に専門家の間で認定されたものではありません。
わかばひふ科クリニックでの患者さんの症状から大雑把に分けたものになります。
ご注意ください。
ではタイプ分けを始めてみましょう。
汗疹のタイプですが、大きく分けて3つに分けることができます
1)赤ちゃんの汗疹
2)子どものかゆい汗疹
3)子どもの痒くない汗疹
です。
分け方が大雑把ですか?
年齢で分けられないか?
いえいえ、それは難しいものがあります。
乳児期、幼児期のそれぞれの汗疹はそれぞれオーバーラップしますので、
くっきりきっちりと分けることができないのです。
なので、大雑把な傾向として見ていただけると良いかと思います。
1)赤ちゃんの汗疹
まず赤ちゃんの汗疹についてお話をしていきましょう。
赤ちゃんの汗疹の特徴はその発生時期と発生部位です。
まず発生時期。実は年中、いつでもでます。
真冬に出ることもあります。意外に多いですよ。
もちろん夏にも多くできます。
次に発生部位。
他のタイプの汗疹とは異なり、関節部分にはできることが少ないです。
一番多いのは胸部腹部、ついで腰背部、陰部など。
躯幹のほうが四肢よりも多く出現する傾向があります。
また最大の特徴ですが、すぐできるがすぐに引っ込む。
痒みが無いというのは症状の特徴になります。
ちょうど蕁麻疹のようにも見えることがありますね。
上記のような特徴をもちますので対処方法もそれに合わせてとなります。
基本的にはかゆみ止めやステロイドは積極的に使用する必要はありません。
洗い、流し、乾かして冷やす。
それだけで十分に抑えることが可能なのが特徴です。
(ステロイドを塗っても抑えるのは可能なので、無用とまでは言いませんが)
引っ掻いてこじらせることもありませんので、悪化もあまりありません。
びっくりはされるのですが、治療として怖い病気ではないのが特徴です。
2)子どものかゆい汗疹
汗疹の中で最も厄介であり、こじらせる可能性があるのが
子どものかゆい汗疹です。
一般的には2,3歳位から出るかと思います。赤ちゃんにはなぜかありません。
発生部位は一般的に汗疹としてみなされる関節の内側部分。
特に頸部、肘、膝の3箇所が最多です。
それ以外にも脇の下、鼠径部、おむつの中などに出現します。
また発生は夏場がほとんどです。
前項との大きな違いは発生部位にもありますが、とにかくかゆいこと。
引っ掻いてしまい、汗疹を悪化させることもありますし、
ときにとびひになったり、ヘルペスの二次感染を起こしたりと
手こずることがときにあります。
また症状が引くまでには数日が必要になることも赤ちゃんの汗疹との
大きな違いです。
言ってしまえば赤ちゃんの汗疹が蕁麻疹に近いのに対して、
子どもの汗疹は湿疹に近い状態と考えられます。
治療についてですが、痒くなる以上積極的に行うべきでしょう。
特に二次的なトラブルの発生率を下げる目的もあります。
ステロイドなどのかゆみ止めの塗り薬を積極的に使用しますし、
必要があればかゆみ止めの飲み薬を併用することもあります。
ガッチリと治療を行い一気に症状を抑え込むことを推奨します。
3)子どもの痒くない汗疹
こちらの汗疹もときに目にすることがあります。
しかし当初から痒くない汗疹として出現するわけではなく、
汗疹が痒くない状況に変化していくと考えたほうが良さそうです。
したがって、発生部位はかゆい汗疹と同じような状況になります。
症状は帯状に存在しているかさぶた、もしくは白い発疹です。
当然痒くありませんので、引っ掻いたりいじったりしている様子はありません。
治療方法は逆に厄介です。
基本的には痒くない汗疹については、放置を推奨しています。
もとは痒い汗疹でしたが、痒いときと同様の治療は却って治りを遅くします。
したがって、ステロイドなどの塗り薬は禁止となります。
乾燥し、枯れて剥がれていくのを待つのが一番の治療法です。
では痒くない汗疹とは一体どのような状況なのか?
実はこれは感染症に近い状況です。
ちょうど、とびひのかさぶた、マラセチア毛包炎の白いぶつぶつに近いものと
考えても良いいかもしれません。
なので、ステロイドを塗ることにより却って悪化してしまうと考えられます。
だから何もしないのが一番だったりするのです。
似たような発疹。しかしそれぞれの形は全部異なります。
したがって全てに万能な治療法というものはありません。
それぞれの汗疹の形を見て、どのような治療法が有効なのかを推測しながら
治療法を組み立てていく必要があるのです。
たかが汗疹、されど汗疹。意外に奥が深いのが汗疹だったりするのです。