わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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卒業

保湿剤を卒業するというお話

今回は保湿剤のお話です。

保湿剤の卒業シーズンはいつか?と言われたらそれは「夏」なんですよ。

というお話。

 

夏も真っ盛りになりました。

そうすると、汗疹だったり虫刺されだったりで受診される子達も増えてきます。

その時の患者さんの名前をみて、「おっ」と思うこともときにあります。

そうなんですよ、赤ちゃんのときにアトピーとか乾燥肌で何回も受診されていた子が

久しぶりに来院したりするんですよ。半年ぶりとかに。

 

で、診察をするわけですね、虫刺されや汗疹などの。

その後処方の段階になったときに保護者の方に言われるのが

「保湿剤も一緒にください」という一言。

 

そこでもう一度全身の皮膚を触って確認するのですが、乾燥はだいぶ落ち着いています。なので、

「保湿剤は要らないですね」

「保湿剤はもう卒業していいと思いますよ」

というとびっくりされるのですが。だって夏ですし。

 

 

アトピー性皮膚炎や乾燥肌がなぜ起きるのか。

いろいろな理由はあるのですが、一つの原因に皮膚の生理的な乾燥があります。

生理的というのは誰にでもあること。

つまり、小さな子というのは年齢が低いがゆえに皮膚が乾燥しているのですね。

裏を返すと年齢が大きくなるにつれて皮膚の乾燥はなくなっていくものなのです。

これがアトピー性皮膚炎の一つのポイントになります。

子供のアトピーは年齢とともに良くなる子が多い。

でも大人のアトピーは年齢が上がったから良くなるわけではない。

という違いの理由ですね。

皮膚がしっかりしてくるので、湿疹ができにくくなるというわけです。

あとは季節。厳密には空気中の湿度によるのですが、

日本だと夏は高く冬は低いということになります。

皮膚というのは体の中と外つまり環境との境目に位置しますので、

環境の乾燥の影響を受けます。

そのために乾燥した冬は皮膚も乾燥方向に持っていかれるんですね。

つまり夏は乾燥しにくいわけです。

 

この年齢と季節の話を総合すると、

冬に乾燥し、夏に乾燥がなくなることを毎年繰り返しながら

年齢が上がるに従って乾燥しにくくなって大人の肌になっていく。

ということになるのです。

 

したがって夏は保湿剤が要らなくなってくるわけですね。

しかもしばらくぶりに受診をしたという子はそれまでの数カ月間は落ち着いているわけです。

だから、まず保湿剤は卒業してみる。

その後様子を見て、悪くならないならそのまま保湿剤は使う必要はないし、

乾燥が出てくるなら保湿剤は使用する。

その後、季節が冬になって乾燥するのなら保湿剤を使用する。

という流れにしたほうが良いと考えています。

そもそも保湿剤を使わなくても問題が起きないなら使う必要はありませんし、

保湿剤を塗るということが金銭的なコストだけではなく、時間とか手間という目に見えないコストも発生しているわけですから、

使わなくて済むなら使わないというのが合理的です。

 

(なお、症状が何もなくても保湿をしたいという考え方はある程度合理的だとは個人的には思いますが、

症状がないのに保湿をするというのはそれはもう医療ではなくお化粧品、美容の考え方なのですよ…

それには医療保険を使うことができません、薬局などで保湿剤を買ってくださいという話になるのです)

 

そんな理由があるので、夏は保湿剤を(とりあえず冬までは)卒業しましょうということが多いですし、

それは夏でないと言えないセリフだということをわかっていただけるとありがたいのです。