「TVディレクターの演出術」
著:高橋 弘樹
開業して、初めて知った世界にTVの世界があります。
短時間ですが、1回だけ出演することがありました。
(他にもお話はいくつかあるのですが、ここでは割愛します)
そこで出会ったのが制作会社のディレクターさんです。
どの方も個性的でしたが、ある、一定の方向性があるように見えました。偏見と言ってもいいでしょうか。
そんなこんなで少しモヤモヤしていた時に見つけた本です。
この著者はテレビ東京のディレクターです。
テレビはNHKとテレビ東京くらいしか、しっかり見ようとしていない
(というか、のんびりテレビを見ている余裕が無い)
ので、非常に興味深く読むことが出来ました。
しかも、あの「空から日本を見てみよう」しりーずなど、個人的に興味深いと思っている作品を作るディレクターさんなので、
さらに楽しく読むことが出来ました。
番組のリサーチの仕方、脚本の作り方、カメラの回し方、撮影の仕方、話の持って生き方・・・
特にドキュメンタリー系の番組を多く作っているディレクターさんらしく、現実的でいて、なおかつ示唆に富んだ
お話が続きました。
瀬戸内海の無人島で見つけた19点のテスト用紙。
横浜の海のそばのガケの上に建てられたマンションに住んでいるおばあさん。
ソロモンで現地の人にココナッツを投げられた時の周囲の反応。
一つひとつのお話を丹念に拾い、それを広げて一つの物語を作っていく真摯な姿勢に素晴らしいと思いました。
でも、今のテレビでこの様な作り方をしている。そして許されているのはどのくらいの数なんでしょうか。
お金がない分、逆に知恵を絞らねばならないテレビ東京。
そして、「面白い」よりも「ためになる、知って嬉しい」番組を見たい人が他の局よりも高い割合で存在する(だろう)テレビ東京の立場だからこそ、
許されている方法なのでしょうか。
ということを考え、その他の局の番組を見ていると、なんだか悲しくなってしまいます。
最近、知的好奇心を刺激される番組が少なくなってしまったような気がするからです。
ドキュメンタリーの数も質も減っているような気がするからです。
芸人がひな壇で騒いでいるだけの番組には飽きました。
張る必要もないのに体を張ってお笑いを誘おうとしている番組にも飽きました。
このお正月もきっとテレビのスイッチはついているのでしょう。
でも、ただそれだけ。時にちらりとテレビに目をやっては、他のことをしているのでしょう。
まあ、中の人がそれでいいなら、それでいいのですけどね。