今回は少しショッキングなお話をしていきましょう。
乳児湿疹。
赤ちゃんのいるお母さんはよく耳にする言葉だと思います。
一般的にもよく耳にしますね。
でも、私はこの病名は大っ嫌いです。
なぜか、「思考停止ワード」だからです。
湿疹(皮膚炎)の名前の付け方にはいろいろな物があります。
まず、原因によるもの
接触皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、小児乾燥型湿疹、自家感作性湿疹など
ついで、部位によるもの
手湿疹
あとは、形や症状によるもの
貨幣状湿疹
等があるでしょう。
あとは、特殊な病名の付け方としてアトピー性皮膚炎があります。
しかし、このアトピー性皮膚炎というものは「時とともに湿疹の出ている部位がかわる」湿疹
という意味ですので、これは症状を表した病名ということになります。
では、乳児湿疹とは何か。
これは「乳児にできた湿疹」を意味します。
乳児にできた湿疹は乳児湿疹。
では幼児湿疹、思春期湿疹、中年湿疹、高齢者湿疹はあるのかと言えば、それに当てはまる言葉はないのです。
なぜ乳児湿疹という言葉だけが大手をふっているのか?
それには2つの理由があります。
一つ目は時間が経ってしまえば落ち着いてしまうから。
もう一つは何が起きているのか、医療者の側もよくわからないから。
なのです。
つまり、「よくわからないけど、そのうち治るから」という理由で「乳児湿疹」と名づけていることがあまりにも多いのです。
湿疹が起きるには原因があります。しかし、その原因がなにで、一体皮膚表面には何が起きているのか。
そして、それはなぜ悪化したのか。
そこまで考えて初めて治療法が見つかるのです。
また、治療とはタダ単に薬を塗るということではありません。
毎日のスキンケアについての指導を行うことも立派な指導になるのです。
しかし、その部分への注意が少ないと、「乳児湿疹」という診断だけ行い、漫然と治療を行う。
ということになってしまうのです。
湿疹が起きるのには原因は必ずあります。
(一部、原因そのものの対処ができない物ありますが、それはまた別の問題です)
その原因がわからなければ「原因による病名」をつけることができません。
ですので、「乳児湿疹」と名前をつけてお茶を濁すことになるのです。
最後にもう一度繰り返します。
私は「乳児湿疹」という病名は大っ嫌いです。
原因を探すこともせず、対処もせず、思考停止をしていることがわかってしまう言葉だからです。