わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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ステロイド

ブヨ刺され・結節性痒疹の治療法その1 まずは薬をしっかりと塗りましょう

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さて、昨日のお話でブヨ刺され・結節性痒疹のお話をしました。

本日はその治療のお話を進めていきましょう。

 

結節性痒疹の特徴は非常に炎症が強いことです。

それに伴い、痒みも非常に強いものがあります。

ですので治療法もその強い炎症に合わせて行う必要があります。

 

1)ステロイドの塗り薬

治療の最初はステロイドの塗り薬です。

薬の選択ですが、小さな子にも、非常に強いものを使うことがあります

というか、使わざるを得ないのです。(ステロイド外用薬の強さ

まずはしっかりと痒みと炎症を取ることが大事です。

時には多毛などの副作用が出ることがありますが、

ある程度の副作用は出ることを承知の上で使うこともあります。

なお、副作用は塗るのをお休みすると落ち着いてきますので、

早く治すことはすれだけトラブルの可能性を減らすことにもなるのです。

 

2)プロトピック軟膏

プロトピック軟膏とは、ステロイドと違う成分の、炎症を抑える薬です。

一般にはアトピー性皮膚炎に使われますが、それ以外のさまざまな皮膚の病気にも使われています。

副作用は、塗り始めの1,2週間にひりひり感や火照る感じがするくらいです。

また、ステロイドの塗り薬と違って、長期使用に伴う副作用が少ないことが特徴です。

(もちろん、免疫を抑える薬ですので、真菌やウイルス、細菌による感染症を起こしやすくなりますが)

効果はステロイドに比べ、痒みを抑える傾向が強いです。

(一般的に湿疹の部分には皮膚直下まで神経が伸び、痒みに敏感になっているのですが、

プロトピックはその伸びた神経を縮める作用があるようです。)

そのために、プロトピックとステロイドの塗り薬を併用することもあります。

 

3)ステロイド内服

本当に症状が強い時に短期間に限り飲んでもらうことがあります。

当院では使って2週間程度です。

少量を長期飲むという選択もありますが、

小さい子の場合、将来成長に問題が起きる可能性があるので、当院では行っておりません。

 

4)抗ヒスタミン剤内服

いわゆる一般的な痒み止めの薬も飲んでもらうことがあります。

時に眠くなるので、要注意。

 

 

当院で治療に使う薬は上記にあげた薬で、一般的なものです。

あとは、使い方ですが、

乾燥肌がある子にはまず、全身に保湿剤をしっかりと塗ってもらいます。

意外にこれを忘れると乾燥により引っ掻いてしまうことが有るのです。

同時に結節性痒疹の部分を引っ掻いてしまい、落ち着かなくなる原因にもなります。

その後、結節性痒疹の場所にステロイド(+プロトピック)を塗ってもらいます。

 

この時の注意。

ひとつ、少し広い範囲に塗ること

ふたつ、少しでもしこりやかさかさを感じたらためらわないこと

みっつ、ほてった時には塗らないこと

よっつ、こすったり、擦り込んだりしないこと

結構大事なことですよ。

 

あとは、忘れていけないかさぶたのケア。

私はかさぶたにも薬を塗るようにお話をしています。

かさぶたの部分からの薬の吸収についてはわかっていないことも多いのですが、

少なくともかさぶたが痒くなることは防げるようです。

ですので、しっかりと塗ることにより、かさぶたをむしらずに自然に落ちるのを待つことが出来るのです。

 

まずは薬をしっかりと使うこと。

次はそれでも治療が難しい場合のお話です。

質問:とひびにステロイドを塗ってもいいのでしょうか?

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先日、知人から質問を受けました。

なんでも、子どもがとびひになってしまったそうです。
近くの皮膚科でステロイドと抗生剤の混じった塗り薬をもらって塗っていましたが、
良くならなかったので、別の病院に受診した所、その先生に

とびひにステロイドを塗るとはけしからん

と怒られてしまったそうです。
その先生曰く、とびひにはゼッタイ、ステロイドは塗っては行けないそうです。

 

本当にそうなの?

 

確かにとびひは黄色ブドウ球菌などの細菌による感染症です。
また、ステロイドの塗り薬を細菌感染症に塗るのは原則禁止するべきことです。
教科書にもそのように書いてあることもありますよね。

でも、「とびひの治療」にはそうかもしれませんが、
「とびひになった子」の治療はもっと複雑になるのではないでしょうか?

 

まず、そもそも、とびひは皮膚にトラブルの有る子がかかる病気だということ。
昔、とびひの統計をとったことがありますが、約半数の子にアトピー性皮膚炎や乾燥肌といった
皮膚のトラブルがそもそも存在しているのです。

そんな子たちは、もともと皮膚が痒くてひっかいています。
その引っかき傷から細菌が入ってとびひになってしまうのです。

その点とも関連しますが、とびひの子は結構な割合で痒みを伴うことも事実です。
とびひは正式には伝染性膿痂疹と言いますが、それが一部、湿疹のようになることもあります。
膿痂疹性湿疹と呼びますが、これは痒いです。

この痒みにはステロイドの塗り薬は有効ですが、抗生剤ではかゆみは取れません。
また、伝染性膿痂疹の発疹と膿痂疹性湿疹の発疹は非常に紛らわしいのです。

確かに、お医者さんは見分けることが出来るかもしれません。
でも、「伝染性膿痂疹には抗生剤を塗ってね。膿痂疹性湿疹にはステロイドを塗ってね。
あ、でも、逆にすると悪くなりますから注意してね」
と言われて、そう言われたお母さんは家でしっかりと塗ることが出来るのでしょうか?
非常に難しいでしょう。うちでもたぶん無理です。事務長がブチ切れている姿が目に浮かびます・・・

現実的では無いですよね。

 

私は、そもそも、治療とは「病気を治す」のではなく、「病気になった人を治す」ことだと考えています。

同じ効果が期待できるのであれば、より単純であること、簡単であることが大事だと考えます。
とびひは塗り薬だけで治すのではなく、飲み薬や毎日の生活指導など、他にも気をつけるべき
重要なポイントが幾つもあります。
あくまでも塗り薬はその中の一つでしか無いのです。
病気の治療はあくまで、簡単にするべきでしょう。

 

なので、当クリニックでは
とびひにステロイドの塗り薬を使うことがあります。
あ、もちろん、家族の希望がなければ使いませんよ。

 

追記
とびひの統計ですが、論文として報告しております。
興味のある方はご確認下さい。
当科における最近の皮膚細菌感染症についての検討

質問:犬がステロイドの軟膏を食べてしまいました。どうしたらいいでしょうか

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回答

あまり気にすることは無いでしょう。今までトラブルになった話は聞いていません。

と今までは答えていたのですが、先日こんなことがありました。

 

そろそろ夕方になろうかという時間です。
1ヶ月ぶりに来院した方が診察に訪れました。
その方は慢性湿疹でステロイドをつけていた方です。
診察室で話を効いていると、どうもあまり良くならないとのこと。
十分効くだけの薬を出したのに、何故と思いながら話を効いていたのですが、

ウチで飼っていた犬が薬を全部食べてしまいました。

とのこと。な、なんだってー。

それは良くならないはずと思い、詳しく聞いて見ることにしました。
なんでも、机の上に出しっぱなしにしていた軟膏壷を勝手に開けてしまい、全部キレイに食べてしまったとのことです。

犬はどうなったかと聞いた所、入院して血液検査をしたと。

な、なんと。
犬に健康被害が出たのを聞いたのは初めての事なので、詳しく聞いてみたら、
体重が2,3Kgの仔犬だったそうです。

 

 

いままで、何度か同様の話を聞いたことがありますが、
今回の話は一番重症でした。(犬にとって)

当然、薬ですから、摂取量と体重によって濃度が変わってきます。
また、ステロイドの薬の強さも影響してくるでしょう。

振り返って考えてみると、いままで問題がなかったのは、

ロコイドクラスの塗り薬を10g,体重10kg以上の成犬が食べた

話だけでした。
今回は

アンテベートクラスの塗り薬を10g、体重2,3kgの仔犬が食べた

わけですから、薬剤が吸収された時の濃度、効果は当然異なるわけです。

そのため、血液検査で異常が出たのでしょう。
これも、ステロイドそのものの薬理作用か、お腹が痛くなったので出た反応なのかはわかりませんが。

 

でも、最終的には何事も起きなかったので、一安心です。
良かったよかった。

 

今後、タイトルの質問をされたら、

「薬の強さ、濃度、摂取量、犬の体重によって症状の出方は変わるので、心配なら一度獣医さんに相談して下さい」

と答えるようにします。

 

 

 

でも、一番疑問なのは、どうして犬はステロイドの塗り薬が好きなんでしょうか。
美味しいのかなあ。よくわかりません。

一度、メーカーさんに聞いたのですが、呆れられてしまいました。

もしも、ご存知の方がおりましたらご一報いただけますでしょうか。

 

虫さされの治療のお話

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以前に虫さされの話をしておいて、治療の話をしていなかったのをすっかりと忘れていました。 m(-_-)mゴメンナサイ

今回は治療の話をして行きましょう。

 

前回の記事のとおり、虫さされの反応、は毒に対する化学的反応とアレルギー反応の混ざったものです。

この反応は、正直無くても構わないものです。

毒と言っても、日常刺される虫からの毒の量はごく微量であり、生命に危険を及ぼすものでは無いこと。

(厳密には注意する虫もいくつかありますが、普通に生活している限り出会うことはまずないでしょう)

また、毒自体は体の中でいずれ中和され無毒化されること。

アレルギー反応も本来必要とされる強さよりも強く出現しすぎていること。

などから、利点よりも欠点の多い反応と考えます。

 

したがって、中途半端に痒いのを我慢するよりは病院で薬を処方して貰った方が良いのでは無いでしょうか。

薬もしっかりとステロイドをもらって構わないと思います。

 

ステロイドの塗り薬は副作用を心配する方も多いのですが、虫さされの治療についてはステロイドの副作用はは殆ど無視出来るものです。

なぜなら、虫さされの反応は数日で引いてしまうので、物理的に大量、長期間使わないからです。

また、同じ所を何度もさされる可能性は少ないですから、同じ皮膚にずーっと塗り続けるないからなのです。

(ステロイドの塗り薬の影響は、薬の強さと塗布量、塗布期間をその場その場の皮膚が反応することによって決まります)

 

では、薬局で購入する薬や市販薬(OTC)はどうか。

私は一時しのぎにはなりますが、根本的な治療にはなかなか結びつかないと考えています。

まず、OTCの炎症を抑える力は処方されるステロイドの塗り薬より弱いです。

では、OTCを塗ることで痒みはなぜ抑えられるのかというと、麻酔薬で神経の反応を抑えているからなのです。

したがって虫さされによる炎症はそのまま残っている状態です。

もちろん、炎症は自然に落ち着いてきますが、その時間はステロイド塗った時よりもとても長くなってしまいます。

したがって、症状が引くのに時間がかかるのです。

 

つまり、虫さされは

アレルギー反応→炎症→痒み

という症状が出るわけですが、

ステロイドはアレルギー反応そのものを抑える。

OTCは痒みを抑えるが、アレルギー反応は残ってしまう。

という違いが、効き目となって現れるのです。

 

もう一点、OTCをあまりおすすめしない理由ですが、

いくつかの商品では、薬を塗るところがギザギザ、トゲトゲしているものがあります。

これは絶対にオススメ出来ません。  乂(´Д`;)

ひっかくという行動は虫さされには絶対に良くないのです。

 

では、ひっかくのはなぜダメなのか。

このお話はまた今度しましょうか。