さて、今回は小さなやけどの治し方についてお話をしたいと思います。
「小さな」「大きな」というのはやけどに関してはあくまでも便宜上の区別です。
しかし、体表面積の10%を超えると、場合によっては入院が必要となることもありますので、
治療の方向性が大きく変わることもあります。
今回は、クリニックに通院して治療することができる、それ以下の面積のやけどの話をしたいと思います。
さて、やけどとは一体何でしょうか。
体の中ではなにが起きているのでしょうか。
やけどは人体に熱を加えると発生します。
温度は50度以上なら起きると言われています。子どもはもっと小さい温度でも起きることがあります。
やけどの正体は熱により皮膚のタンパク質が壊されること。
それにより、皮膚の機能が果たせなくなることが問題なのです。
よく、やけどのあと、水ぶくれになることがありますが、これはあくまでも表面に見える症状です。
その周囲には役目を果たすことの出来ない皮膚が広がっている可能性があります。
また、その影響は時間が立ってから初めて見えることもあるので、油断できません。
一般に数日経過して初めて皮膚の影響がはっきりわかるのです。
(低温熱傷は例外。もっと外まで影響が広がっていることがあります)
皮膚に影響した熱の強さにより、皮膚の変化は様々に変わっていきます。
弱い時にはただ赤くなる。そして、ヒリヒリします。
更に強くなった時には水ぶくれになり、
更に強い時にはその部分が焼けたり、こげたりして死んでしまいます。
痛みはあったりなかったり。
でも、実は痛みが無い方が症状は悪いのです。
なぜなら痛みを感じる神経が死んでしまうために痛みすら感じなくなるのです。
なので、痛みが無いときには要注意です。
治療ですが、また症状によって変わります。
皮膚が赤くなった時には細胞はまだ生き残っているので、
炎症をステロイドで抑えることで落ち着くこともあります。
逆に皮膚の表面が死んでしまった場合はその死んだ皮膚を剥がして、
新しい皮膚を生やして上げる必要があります。
必要があれば皮膚を移植する手術も行うかもしれません。
一番、治療の選択にバリエーションが有るのは水ぶくれが見られるときです。
水ぶくれを剥がすべきか残すべきか。
薬を使うか、シートで覆うか。
これは人によりかなり方針が異なります。
当院では破れていない水ぶくれはそのままにし、
上からシートで覆うような治療法を行っています。
これは、水ぶくれの中にはバイキンがいないということ。
中の水には傷を早く治す成分が沢山入っていること。
という事実を基に選択する治療法です。
もちろん、薬が早いと思えば薬を使うこともありますが、大部分は
シートを使います。
あと、シートの利点はもう一つ。
痛みやひりひり感はシートを使ったほうが痛くないのです。
なので、当院では8割以上の患者さんにシートを使っています。
軟膏とシートの併用も含めるとほとんどすべての患者さんにシートを使った治療を行っています。
(なお、このシートを使った治療は閉鎖療法や密封療法,湿潤療法と呼ばれています。)