わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F

書評

「はたらく細菌」 著:吉田はるゆき 監修:清水茜



 

以前にも紹介しました「はたらく細胞」のスピンオフ作品です。

 

今回紹介をしようと思った理由は非常に簡単でして、

登場人物(というか菌物?)にアクネ及びマラセチアが出てきているんですね。

作画については少女マンガによっています。また本編より平易な言葉で表されているので

思春期以降の男子が読むには少し厳しいかもしれませんが、

ニキビの話など、簡潔にまとまっているので、ニキビを気にされる方などは

読んでみても面白いのではないかと思いますよ。

食事と腸内環境のお話、腸内と生活の相関など、

非常に幅の広いお話が細菌目線で書かれています。

医学的にもまとまっていますので、入門書として読んでみても良いかと。

 

 

『君たちはどう生きるか』

書店でこの本を久々に目にしました。
何周目かの流行りなのでしょうか、岩波文庫のほか、マンガ、そしてついに解説本まで出ました。

解説するのは、ご存知池上彰さん。
そして、出張授業先が武蔵中学というのも納得です。開成には向いてないでしょうね・・

とても古い本で、初版は1937年、なんと戦前です。私自身は中学生の時に読んだ記憶はありましたが、当時はなんだかめんどくさい本だな、位しか思いませんでした。

今回、約30年ぶりに読む前に、先に池上解説を読んでみました。
こちらは、NHKで2011年から続いている、『100分de名著』の特別授業です。テレビでの放送はないそうなので、NHKテキストのみになります。

結論から言えば、解説を読んでからのほうが、くじけずに読了出来る気がしました。
自分自身がまだまだ人間として未熟者ですので、物事の捉え方が一辺倒であることを痛感。

それでも、中学や高校の時なら受け入れることが難しかったり、腹を立てたりするようなエピソードも、歳を重ねたことで許容出来るようになっている事も発見。

まだまだ器は小さいままですが、多少の伸び縮みは出来るようになったのでしょうか・・

10年に一度くらい読み返してみると、読む人それぞれの人生と相互作用を起こして、また違った想いを起こさせてくれるような気がします。

お正月休み、解説と文庫とをセットで是非読んでみてください。



 

「王子様のくすり図鑑」 著:木村美紀 監修:石川洋一

うーん。どこかで見たことのある、絵柄だなあ。

と思ったのが第一印象でした。

ああ、ファイナルファンタジーとかで見ましたねえ。

ということで、幾つかのシリーズがありますが

その中でも絵柄が一番好みだったりします。

 

小学校低学年から高学年くらいが対象でしょうか。

薬の説明というよりもどのような効き方をしているのかの説明になっています。

 

でも、無味乾燥な説明書よりはこっちの方が読んでいて楽しいですよね。

 

ということで待合室に置いてありますので、

興味の有る方は手に取って眺めてみてはいかがでしょうか?

 

書評:「はたらく細胞」 著:清水茜

マンガも読みますよ?

 

本屋さんの店頭で平積みの1巻を見つけて、思わず衝動買いしたのが最初です。

 

ヒロインは赤血球

ええと、血液1μlあたり300万個くらい居ますよね。

ヒーローは好中球。

こちらも血液1μlあたり5000個の50%だから2500個くらい居ますよね。

 

凄いなー。

今まで見た中で一番小さなヒーローとヒロインだー。

と考えてみたり。

まあ、最初はそういったわけで正直イロモノとして見ていたのですが・・・

 

いやいや。

しっかりと書いていますよ。

戦闘シーンは本当なわけがありません。

顕微鏡で見ている感じでは静かなものですから。

こんなに熱血はしていませんよ。

 

でも、生体内でどんな細胞が何を行っているのか。

それについては(医学部学生時代の知識プラスアルファしかありませんが)教科書レベルの記載としては

全く問題なし。

 

なんですよ。意外でしたが。

 

そんなこんなで毎度毎度新刊が出るたびに購入して

今回は4冊目です。

 

血液・血管系だけではネタが持たないんでしょうね。

いろいろなところでの感染症との戦いです。

そういえば3巻ではニキビ居たなあ。

 

一つ言えることは、

これは学習漫画としても、問題は無いのでは無いかと思うんですね。

 

子どもたちの興味を引かせるには良いマンガかと思います。

時にスプラッタですが、中学生高校生向けに読むには良いかもしれません。

生物特に人体の分野が苦手という方も多いかと思います。

でも、こういったマンガをきっかけにして興味の幅を広げていっても良いのではないかと思うんですね。

 

というわけで、(皮膚科医ですが、)オススメします。

 

 

書評:おやすみ、ロジャー 

おやすみ、ロジャー  魔法のぐっすり絵本

「おやすみ、ロジャー」

 

なになに、10分で寝かしつけが出来る?

という帯に釣られて購入。

よし、やったろうじゃないと思って、早速やってみましたよ。

1歳半の娘と、8歳の娘です。

 

確かに、眠れる絵本としては優秀かもしれません。

「眠る」と言うキーワードを軸に、

ゆっくり、のんびり、頭を空っぽにさせるワードが散りばめられています。

ところによっては、実際によく眠れるようになる、アドバイスまでついています。

心理学を少しだけかじった人であればわかると思いますが、

自己暗示(子どもに聴かせるので、他者暗示?)の内容にしてはいいのかもしれません。

 

お話の内容はあまりないようです。

というか、ワクワクドキドキハラハラするシナリオだと、子どもは起きてしまいますから、

平坦な内容。行って戻ってくる内容で良いのかもしれません。

当然といえば当然ですが。

 

と、まあ、心理学的な要因やら、文学的な要素やらを深読みしながら、

のんびりよ読んでいくと。あらまあ、上の娘はあっという間に眠ってしまいました。

10分かかっていませんよ。せいぜい5分と言ったところでしょうか?

 

対して、下の娘はというと・・・

遊んでいます。読み終わったのに・・・30分読んだのに・・・・

でも、まあ、少し眠そうにしているのかな?

というくらいなのですが、そのレベルは通常の寝かしつけと

あまり変わるものでは有りません。

その後、電気を消しても15分位は起きていました。

 

とまあ、ある意味当たり前の話なのですが、この本はある程度

言葉の意味がわかり、理解できる年齢になっていないと

効き目は無いように思えます。

印象としては3歳4歳位以上でしょうか?

それよりも小さな子だと、むしろ理解が出来ないように思えます。

アマゾンの評価をいろいろと読んでみましたが、

効果があるのはやはり、

・ある程度の年齢であること。(大体4歳以降かな?)

・兄弟がいないか、離れていること(退屈なので、お互いに遊んでしまうと意味が無い)

といったことでしょうか。

大人にも効果ありますね。読み聞かせて

 

あとは、毎日読み聞かせてあげて、眠ってくれるかですね。

これに関しては、いちどでもこの本で寝てくれた子であれば、しっかりと眠ってくれそうです。

というのも、この本を読んで眠った。

というポジティブな印象をこの本に対して持ってくれれば、次回以降も

同様に印象は良くなり、眠れるようになる可能性は十分にあります。

 

まあ、催眠というよりも自己暗示に近いレベルのものかとは思いますが、

独特なアプローチで作られた本としては面白いかなと思います。

ある程度お話の解る幼稚園児以上の子で、寝てくれなくて悩んでいるような方は

いちど試してみてはいかがでしょうか。

 

今後、連日読み聞かせてあげてどのようになったのか、実際にやってみたいと思います。

 

書評:「下流老人」 著:藤田孝典(朝日新書)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)週刊東洋経済 2015年 8/29号[雑誌]

「下流老人」 著:藤田孝典(朝日新書)

 

先日NHKスペシャルでも放送されていました。

また、週刊誌でもありましたので、気になっている方は多いかと思います。

 

下流老人

非常にインパクトのあるタイトルです。

「下流」ナニナニと言うのはいぜんより使用される言葉ですが、

ついに高齢者の世界まで入ったかと、当初は簡単に考えていました。

でも、実際に本を読んでみると衝撃以外の何物でも有りません。

テレビでは語りきれなかった、問題がこれでもかと提示されます。

 

高齢者は病気になりやすいのは自明の理ですが、

その結果どうなるかという結末一歩手前の状態が書かれています。

 

読まれたからの中には大げさではと思う方も居るかもしれません。

でも、これ、事実ですよ。

 

職業柄高齢者のお宅まで往診してお伺いすることがあります。

さまざまなお家があります。

普通のお家で家族と一緒に暮らしている方も多いのですが、

逆に、この本に書かれているような生活をされている方もいます。

 

いつ行っても部屋のなかが雑然としている。

部屋の中からあまり良くない匂いがする。

食事はいつ行っても同じもの。菓子パンとお弁当だけ。

コップの中には、いつからあったのか分からない謎の黒い液体が入っている。

などということもあります。

(有る特定のお宅では有りません。幾つかのお家の話を合成しています)

また、介護している方も、かなり疲れていたり、

外出していないように見えたりします。

エアコンがそもそも設置されていない、冬なのに薄い布団しか無い。

などという家庭もあります。

また、男性が一人で両親を介護していることもありますし、

子どもが引きこもりになっているような家庭もあります。

隣で見ていてその家庭の今後が心配に成ることもあります。

 

ただ、以上のお家すべてに一致することですが

外からは全く見えません。

多分、隣のお家の人はこの状況を知らないんじゃないかな。

と考えてしまうこともしばしばあります。

 

そのような状況を目に見える形で提示したこの本は

それだけでも非常に価値の有る本です。

 

自分が、両親が、家族が・・・・と考えて、ドキッとした方は

一読してはいかがでしょうか。

難しく、深い(不快?)問題ですので、対処法は一筋縄では行かないでしょう。

でも、まず、知ること。

それだけでも随分と世の中が違って見えてくるのでは無いでしょうか。

書評:子どもを伸ばす「生まれ順」子育て法 著:高濱正伸

子どもを伸ばす「生まれ順」子育て法 (朝日新書)

子どもを伸ばす「生まれ順」子育て法

著:高濱正伸

 

子どもをお持ちのお母さんであれば、ほとんどみんな知っている、

花まる学習会の主宰者です。

彼の今までの経験から気づいてきた、子ども達の育て方についての本です。

 

過去の学説その他の余計な情報は出てきません。

多くのお母さんの話を聞いて感じたことをまとめた書籍です。

一般に、様々なデータを持ち出すと説得力は増すのかもしれませんが、

論点はボケてしまいますが、この本ではそのようなことは有りません。

独断であり、問題も有るのかもしれませんが、著者の圧倒的な経験値は

その疑問に対する答えでも有るのでしょう。

 

長男長女、次男次女、末っ子、双子、一人っ子・・・

兄と弟、兄と妹、姉と弟、姉と妹・・・

兄弟の関係性は生まれた時にある程度決まっているものです。

そして家族の中での役割を「担わされていく」、人間関係を「作らされている」なかで、

それぞれの傾向が出てくるのはある意味当たり前のことです。

その傾向を見抜き、対策を考えることは経験を積んだ専門家しか出来ません。

学者には出来ないのです。

 

それぞれの傾向を読んでいると、全くもって然り。

確かに診察室のなかでも現れている印象を受けます。

 

上手に物事を進める基本は、最初に良質な知識を仕入れることです。

子育て中のお母さんは必見の書ですね。

おすすめします。

 

 

また、実はこの本の珠玉は最終章と言っても過言では有りません。

お母さん自身が上の子か、下の子かで、当然お母さんの性格の傾向が決まります。

ということは、子育ての傾向もこれで決まってくるんですね。

母親として、自分の子育てのクセが当然出てくるので、

それを認識しつつ子育て・親育てすることも大事なことなのでしょう。

 

子育てに悩むお母さんも、そのお母さんに心を痛めているお父さんも

必読です!!

「お父さんがキモい理由を説明するね」

お父さんがキモい理由を説明するね―父と娘がガチでトークしました (Linda BOOKS!)

 

お父さんがキモい理由を説明するね

著:中山順司

 

ウ、ウチはまだキモいなんて言われていませんからね。

その辺りはお間違いなく!

 

まあ、小学校に入ったばかりの娘なので、まだ考えていることもそれなりに分かるのです。

しかし、これから徐々にわからないことも増えてくるのでしょう。

いまでも、時にはっとするようなことを言ってきますからね。

 

この本は中学生の女の子とそのお父さんのお話を綴ったものです。

会話がなくなってくるこのお年ごろ、世のお父さんは戦々恐々と迎えるであろうことは

容易に想像できます。

 

じゃあ、実際に子どもはどのようなことを考えているのか?

詳しくは中身を読んでいただくにしても、思ったよりもしっかりと考えているな。

と言うのが正直な感想でした。

 

この時期の父親と娘の関係は非常に複雑かつ難しい物です。

過去を引きずり、子ども扱いする父親と、

成長している実際の娘のギャップ。

娘側も、しっかりとその変化に気がついているわけではないので、もどかしさが先に出てしまう。

また、単純な男性と繊細な女性という性差もあり、

すれ違いが多くなってしまう時期なのでしょう。

母親と男の子ではそうすれ違わないのかもしれませんが・・・

 

さて、ここで気になったことが一つ。

著者は小学校の時はすれ違ったまま時間が過ぎてしまいました。

では、その小学校の時からしっかりとしはお話をしてみたらどうなるのでしょう。

実際に試してみる価値はありそうですね。

 

「ゼロ」

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

 

「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」
著:堀江貴文

 

世間ではホリエモンと呼ばれている著者ですが、初めて知ったのはいつ頃でしょうか。

年齢は大きく変わりません。しかし組織の中の一人として仕事をしていた自分と比べて

上場会社の社長であり、大型の買収合戦をしてみたり、プロ野球球団を持ってみようとしたり、

選挙に出てみたりと、非常に輝いて見えました。

しかし、その後世間の風向きは変わります。

裁判で有罪となり、刑務所に収監されてしまいました。

この辺りの経過は未だに何がどうなったのかよくわかりませんが、

刑務所から戻ってきた著者の初めての書籍となります。

 

彼を見ていて、一つわからなかったことがあります。

どうしてそれだけのことをしているのか?彼はなぜそのような仕事をしているのか?

です。

人生の目的と言ってもよいでしょう。

マスコミの報道からはわかりませんでした。

当然ですね。マスコミ自身によるバイアスがかかっていますから。

本人の著作も読んでみました。

でもはっきりしませんでした。

(多分その頃は自分自身でもよくわかっていなかったのかもしれませんね)

ずっとモヤモヤしていた気持ちは「ゼロ」を読んでみてなんとなく理解できるような気がしました。

 

つまり、

あの仕事とこの仕事を分ける理由なんてないじゃん。

と思ったわけです。

本人の中ではすべて「やってみたい」仕事なんですね。

それを周りが、ITやらメディアやら政治やらラベリングして分けていたんですね。

そのラベルしか見ないから、軸が見えなかったんですね。

 

やりたいことをやり、そのために周囲との摩擦が起きる。

いろいろなことを進めようと思うから、周囲との摩擦が大きくなる。

その摩擦がすこしずつ大きくなり、破断点を迎えた。

とかんがえると、あの時のホリエモンブームが理解できるように思えます。

その「周囲との摩擦」をなんとなく感じる若い人たちが喝采を送り、

「摩擦のないように人生を送ってきた」年長者たちは苦々しく感じる

という反応を示すのも当然のことでした。

 

刑務所の中でやりたいことを考え、世の中に戻ってきた著者が

今後何を考えて、何を行っていくのか、ゆっくりと見て行きたいと思います。

 

「あたりまえだけどなかなかできない 仕事のルール」

あたりまえだけどなかなかできない仕事のルール (アスカビジネス)

あたりまえだけどなかなかできない 仕事のルール

著:浜口直太

 

医者という職業について、私の友達が言っていた冗談があります。

「職業の前に”お”がついて、終わりに”様”が付く職業は”お医者様”と”お代官様”しかいないよね。」

お代官様はもういませんよ・・・

どうも、偉そうということを言いたかったみたいです。

たしかに、偉そうですもんね。でも、現在はそうも行っていられません。

医師といえど、会社の中の一員としての働きを求められることもあるのです。

 

さて、仕事を進める上で必要なことは多岐に渡ります。

その中のすべてを個別に教えることは不可能です。

そのエッセンスを上手にまとめた本があればと思っていたのですが、調度良い本が見つかったので読んでみました。

 

書いてある内容は基本的なものばかりです。

しかし、「何故」「どうして」までしっかりと記載されています。

なんとなく済ませていたこと、なあなあで終わっていたこともこれからしっかりしなければいけないと思えるお話です。

 

そろそろ年度末です。

新入社員は卒業式から入社式までの間にぜひ読んでおきたい本ですね。

もちろん研修医になる前にも読んでおくべき本です。

 

私も、研修医になる前に、この本を読んでおけばよかったと思いました。

医療の世界は特殊であることは理解しています。しかし、その前に人間が作った社会の中の組織であることは同じです。

きっと、沢山のことを読みとることが出来るでしょう。