わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

TEL050-3355-9592


〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F

病気の話

「子」やけどの治し方

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さて、今度は「子」やけどの治し方についてです。

・・・え、「小」の間違いでしょ?いえいえ、それは前回お話をしたので、

今回は子どものやけどについてお話をしたいと思います。

 

子どものやけどと大人のやけどそのものには大きな違いはありません。

でも、子どもには独特なところがあります。

 

まず、こちらのいうことを聞いてくれないこと。

親御さんはいうことを聞いてくれるのですが、肝心の本人は

やけどのそんざいなど、どこ吹く風です。

したがって、どんな生活習慣にも耐えられる治療法を選ぶ必要があります。

また、痛みには我慢できないので、処置中、自宅では極力痛みを伴わない治療を選ぶ必要があります。

逆に子どもであることが有利に働くこともあります。

やけどの傷が早く治ることです。

若いって、いいねぇ・・・と思いながら治療していますよ。

 

さて、痛くない治療法ですが、来れば断然シートの方が良いです。

昔ながらのガーゼと塗り薬だと、ガーゼが傷口にガッチリとくっついてしまい、

剥がす時に痛くなってしまいます。

シートを剥がすほうが痛みは少ないのです。

また、交換の頻度はシートの方が少なくて住みますし、

周りに「つゆ」(浸出液といいます)が漏れることも少ないです。

当然ニオイも少ないです。

 

子どもがやけどになった時には

ぜひ近くのシート治療(閉鎖療法、密封療法、湿潤療法などともいいます)を行っている

医療機関を探してみてくださいね。

もちろん、当院でも治療を行っていますよ。

「小」やけどの治し方

 

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さて、今回は小さなやけどの治し方についてお話をしたいと思います。

「小さな」「大きな」というのはやけどに関してはあくまでも便宜上の区別です。

しかし、体表面積の10%を超えると、場合によっては入院が必要となることもありますので、

治療の方向性が大きく変わることもあります。

今回は、クリニックに通院して治療することができる、それ以下の面積のやけどの話をしたいと思います。

 

さて、やけどとは一体何でしょうか。

体の中ではなにが起きているのでしょうか。

 

やけどは人体に熱を加えると発生します。

温度は50度以上なら起きると言われています。子どもはもっと小さい温度でも起きることがあります。

やけどの正体は熱により皮膚のタンパク質が壊されること。

それにより、皮膚の機能が果たせなくなることが問題なのです。

よく、やけどのあと、水ぶくれになることがありますが、これはあくまでも表面に見える症状です。

その周囲には役目を果たすことの出来ない皮膚が広がっている可能性があります。

また、その影響は時間が立ってから初めて見えることもあるので、油断できません。

一般に数日経過して初めて皮膚の影響がはっきりわかるのです。

(低温熱傷は例外。もっと外まで影響が広がっていることがあります)

 

皮膚に影響した熱の強さにより、皮膚の変化は様々に変わっていきます。

弱い時にはただ赤くなる。そして、ヒリヒリします。

更に強くなった時には水ぶくれになり、

更に強い時にはその部分が焼けたり、こげたりして死んでしまいます。

痛みはあったりなかったり。

でも、実は痛みが無い方が症状は悪いのです。

なぜなら痛みを感じる神経が死んでしまうために痛みすら感じなくなるのです。

なので、痛みが無いときには要注意です。

 

治療ですが、また症状によって変わります。

皮膚が赤くなった時には細胞はまだ生き残っているので、

炎症をステロイドで抑えることで落ち着くこともあります。

 

逆に皮膚の表面が死んでしまった場合はその死んだ皮膚を剥がして、

新しい皮膚を生やして上げる必要があります。

必要があれば皮膚を移植する手術も行うかもしれません。

 

一番、治療の選択にバリエーションが有るのは水ぶくれが見られるときです。

水ぶくれを剥がすべきか残すべきか。

薬を使うか、シートで覆うか。

これは人によりかなり方針が異なります。

当院では破れていない水ぶくれはそのままにし、

上からシートで覆うような治療法を行っています。

これは、水ぶくれの中にはバイキンがいないということ。

中の水には傷を早く治す成分が沢山入っていること。

という事実を基に選択する治療法です。

もちろん、薬が早いと思えば薬を使うこともありますが、大部分は

シートを使います。

あと、シートの利点はもう一つ。

痛みやひりひり感はシートを使ったほうが痛くないのです。

 

なので、当院では8割以上の患者さんにシートを使っています。

軟膏とシートの併用も含めるとほとんどすべての患者さんにシートを使った治療を行っています。

(なお、このシートを使った治療は閉鎖療法や密封療法,湿潤療法と呼ばれています。)

リンパの流れと血の流れ

あまり、知られていないことですが、血液の流れと、リンパの流れは違います。

 

虫刺されのあとや、蜂窩織炎(皮膚の下にバイキンが入る病気です)のあとに、

腫れた部分から体の中心に向かって、赤くなった皮膚が帯のように広がっていくことを

診察時に目にすることがあります。

 

これが、リンパの流れです。

正確にはリンパ管の流れということになるでしょう。

かぶれや虫さされ等のアレルギー反応や細菌などの感染症が起きた時には

このリンパ管の中をリンパ球が通ります。

そのリンパ球はリンパ節にいたり、そこで、「敵の襲来を告げる」=炎症反応を起こすように司令を出すのです。

もちろん、リンパ管に沿って、その反応は伝わりますから、リンパ管周囲には赤く腫れた部分が出来上がります。

当然リンパ節もぐりぐりに腫れることになります。

 

実は、この反応はアレルギーや感染症だけで起きるわけではありません。

他にも悪性腫瘍の時にも同じような原理で、免疫反応が起きると考えられます。

また、転移をするときにはこのリンパ管を経由して起きることがあります。

悪性腫瘍があった部分からリンパ管を経由して、最初に出会うリンパ節のことを

センチネルリンパ節と呼びます。

センチネルとは見張りの意味ですね。

 

ですので、悪性腫瘍がリンパ管を通して転移するときにはまずこのセンチネルリンパ節を経由することになります。

逆にこの原理を逆手に取り、まずセンチネルリンパ節をとってみれば転移が有るかを判断することが出来ます。

この方法をセンチネルリンパ節生検と呼びます。

ここに腫瘍細胞が入るかいないかで転移の有無をある程度判断することが出来るわけですね。

 

では、なぜ、こんなお話をしているのか?

じつは、先日蚊に刺された時にキレイにリンパ管の流れに沿って、赤みが広がってきたんですね。

感心して、思わず写真をとってしまいました。

↓ 毛深いのはご容赦下さい。

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帰省して、増える皮膚病、減る皮膚病

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お盆も終わり、学生の皆さんは夏休みの最後にむけて宿題のラストスパートでしょうか。

当クリニックもお盆休みを終え、スタッフ一同、気力を再充填して毎日診療にあたっております。

 

さて、子どもたちが実家に帰省し、あるいは旅行に行って来たあと、当クリニックを受診すると

お肌の状態が随分帰省前と異なる子がいます。

特にいくつかの疾患が増えた印象があります。

何故なのかも合わせて見てみたいと思います。

 

1)汗疹

特に背中、肘や膝の汗疹が増えた印象があります。

2)とびひ

これも明らかに増えたのではないでしょうか。

3)湿疹

意外に悪くなる方もいます。

 

この2つは、生活パターンやスキンケアの習慣が崩れたためにできたのでしょう。

毎日、お風呂やシャワーを浴びていたのが、交通機関に乗っている間は出来ない。

実家に帰った場合は、その家人との時間の都合が合わずにケアできない。

あるいは、色々なところに出歩くためにケアの時間が取れない。

時には、エアコンなどの冷房設備がそもそもない。

実家にいるペットやいつもと違う環境の抗原に反応してしまう。

など、様々な原因で東京でのケアと同じだけの密度でケア出来ないこともあります。

・・・実家がトトロの家みたいって言われたこともありましたねぇ。

 

 

逆に減った皮膚病もあります。

手足口病はお盆前の患者さんの数がウソのように減少しています。

病気は広がるためにはある程度の患者さんの密度が必要です。

東京都で8月上旬まで広がっていたのは、その密度が十分に高かったのでしょう。

しかし、規制することで患者さんの密度が下がったために減った可能性は有ると思います。

・・・ただ単にみんなすでにかかってしまったからかもしれませんが。

 

8月の民族大移動。

色々なところにその影響は見えてくるのかもしれません。

非常に興味深い話だと思います。

こどものホクロを大きく見ると、違う世界が見えてくる。

さて、質問です。
この機械は何に使うのでしょうか?

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これは、ダーモスコープと呼ばれるものです。

この機械を使うことによって、ホクロを約10倍に拡大して見ることが出来ます。

それにより、ホクロの中にあるメラニン色素の分布をより細かく確認することが出来るのです。

細かく色素を確認できることで、どのようなメリットがあるのか?

 

細かく見ることで、そのホクロが悪いものかそうでないのかの区別を付けられます。

つまり、ホクロの悪性腫瘍、悪性黒色腫なのか、良性の腫瘍、色素細胞母斑なのかを

区別することが出来ます。

 

昔はホクロは「7mmを超えたら取りましょう。」

と言われることが多かったのですが、いまでは、7mmを超えていても、

そのホクロの色素の分布を見ることによって取るべきか取らざるべきかを区別することが出来ます。

 

小さいこどもの手術を行うということは本人や家族にとっても大変なことです。

そのリスクを、てのひらに乗るくらいの小さな機械で防ぐことが出来るのであれば、

とっても良いことなのでは無いでしょうか。

 

当クリニックでもダーモスコープによるホクロの診断を行っております。

前の病院から行っている検査方法ですので、既に数百人以上に検査を行ってきました。

時間はほんの数十秒から数分の検査です。麻酔なども必要なく受診したその日に検査を行うことが出来ます。

 

もしも診断に迷うような場合は、ダーモスコープの専門家が勤務している病院に紹介することも可能です。

小さなお子さんで、ホクロが心配という方は一度近くの皮膚科に相談してみてはいかがでしょうか。

もちろん、当クリニックでも診察を行っておりますので、心配なかたはどうぞご来院ください。

じんましんも流行っています?

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いよいよお盆です。
帰省ラッシュも始まったみたいです。

 

今週、診察をしていてあれあれと思いましたが、
どうもじんましんの患者さんが増えているようです。

幼児、小学生、大人と年齢は様々です。

原因ははっきりしません。少なくとも食事や薬といったものではないようです。

ただ、共通しているのはつかれていること。
夏休みもそろそろ折り返しを過ぎ、子どもも疲れが溜まっているのでしょうか。
また、大人もお盆休みの前に仕事を全部終わらせないと行けないのでしょうか。

ウイルス感染などはないようですので、一つ安心ですが、
しっかりと薬を飲んで、休んでくださいね。

 

あ、でも、みんな疲れているということは
お盆明けに帯状疱疹も増えるかもしれません。
このように考えると、お盆というシステムもいいのか悪いのかわかりませんね。

最後に一つ。このうだるような暑さは絶対に体にわるいです。
ふう。

質問:とひびにステロイドを塗ってもいいのでしょうか?

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先日、知人から質問を受けました。

なんでも、子どもがとびひになってしまったそうです。
近くの皮膚科でステロイドと抗生剤の混じった塗り薬をもらって塗っていましたが、
良くならなかったので、別の病院に受診した所、その先生に

とびひにステロイドを塗るとはけしからん

と怒られてしまったそうです。
その先生曰く、とびひにはゼッタイ、ステロイドは塗っては行けないそうです。

 

本当にそうなの?

 

確かにとびひは黄色ブドウ球菌などの細菌による感染症です。
また、ステロイドの塗り薬を細菌感染症に塗るのは原則禁止するべきことです。
教科書にもそのように書いてあることもありますよね。

でも、「とびひの治療」にはそうかもしれませんが、
「とびひになった子」の治療はもっと複雑になるのではないでしょうか?

 

まず、そもそも、とびひは皮膚にトラブルの有る子がかかる病気だということ。
昔、とびひの統計をとったことがありますが、約半数の子にアトピー性皮膚炎や乾燥肌といった
皮膚のトラブルがそもそも存在しているのです。

そんな子たちは、もともと皮膚が痒くてひっかいています。
その引っかき傷から細菌が入ってとびひになってしまうのです。

その点とも関連しますが、とびひの子は結構な割合で痒みを伴うことも事実です。
とびひは正式には伝染性膿痂疹と言いますが、それが一部、湿疹のようになることもあります。
膿痂疹性湿疹と呼びますが、これは痒いです。

この痒みにはステロイドの塗り薬は有効ですが、抗生剤ではかゆみは取れません。
また、伝染性膿痂疹の発疹と膿痂疹性湿疹の発疹は非常に紛らわしいのです。

確かに、お医者さんは見分けることが出来るかもしれません。
でも、「伝染性膿痂疹には抗生剤を塗ってね。膿痂疹性湿疹にはステロイドを塗ってね。
あ、でも、逆にすると悪くなりますから注意してね」
と言われて、そう言われたお母さんは家でしっかりと塗ることが出来るのでしょうか?
非常に難しいでしょう。うちでもたぶん無理です。事務長がブチ切れている姿が目に浮かびます・・・

現実的では無いですよね。

 

私は、そもそも、治療とは「病気を治す」のではなく、「病気になった人を治す」ことだと考えています。

同じ効果が期待できるのであれば、より単純であること、簡単であることが大事だと考えます。
とびひは塗り薬だけで治すのではなく、飲み薬や毎日の生活指導など、他にも気をつけるべき
重要なポイントが幾つもあります。
あくまでも塗り薬はその中の一つでしか無いのです。
病気の治療はあくまで、簡単にするべきでしょう。

 

なので、当クリニックでは
とびひにステロイドの塗り薬を使うことがあります。
あ、もちろん、家族の希望がなければ使いませんよ。

 

追記
とびひの統計ですが、論文として報告しております。
興味のある方はご確認下さい。
当科における最近の皮膚細菌感染症についての検討

手足口病は、落ち着いた・・・か・・・な?

続続手足口病のお話です。

 

最近、手足口病で受診される患者さんの数は減ってきたようです。
でも、いままでの毎日2人レベルだったのが、2日に1人レベルですから気が抜けません。

 

もう一つ、問題が。

 

子どもたちがみんな東京から地方に脱出しているのです。
多分、それで患者さんの数が減っているんだと思いますが、
逆に、地方に手足口病を拡散することにもなるんじゃないかと
少し心配しています。

 

お盆明けにはどうなっているでしょうか・・・

質問:犬がステロイドの軟膏を食べてしまいました。どうしたらいいでしょうか

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回答

あまり気にすることは無いでしょう。今までトラブルになった話は聞いていません。

と今までは答えていたのですが、先日こんなことがありました。

 

そろそろ夕方になろうかという時間です。
1ヶ月ぶりに来院した方が診察に訪れました。
その方は慢性湿疹でステロイドをつけていた方です。
診察室で話を効いていると、どうもあまり良くならないとのこと。
十分効くだけの薬を出したのに、何故と思いながら話を効いていたのですが、

ウチで飼っていた犬が薬を全部食べてしまいました。

とのこと。な、なんだってー。

それは良くならないはずと思い、詳しく聞いて見ることにしました。
なんでも、机の上に出しっぱなしにしていた軟膏壷を勝手に開けてしまい、全部キレイに食べてしまったとのことです。

犬はどうなったかと聞いた所、入院して血液検査をしたと。

な、なんと。
犬に健康被害が出たのを聞いたのは初めての事なので、詳しく聞いてみたら、
体重が2,3Kgの仔犬だったそうです。

 

 

いままで、何度か同様の話を聞いたことがありますが、
今回の話は一番重症でした。(犬にとって)

当然、薬ですから、摂取量と体重によって濃度が変わってきます。
また、ステロイドの薬の強さも影響してくるでしょう。

振り返って考えてみると、いままで問題がなかったのは、

ロコイドクラスの塗り薬を10g,体重10kg以上の成犬が食べた

話だけでした。
今回は

アンテベートクラスの塗り薬を10g、体重2,3kgの仔犬が食べた

わけですから、薬剤が吸収された時の濃度、効果は当然異なるわけです。

そのため、血液検査で異常が出たのでしょう。
これも、ステロイドそのものの薬理作用か、お腹が痛くなったので出た反応なのかはわかりませんが。

 

でも、最終的には何事も起きなかったので、一安心です。
良かったよかった。

 

今後、タイトルの質問をされたら、

「薬の強さ、濃度、摂取量、犬の体重によって症状の出方は変わるので、心配なら一度獣医さんに相談して下さい」

と答えるようにします。

 

 

 

でも、一番疑問なのは、どうして犬はステロイドの塗り薬が好きなんでしょうか。
美味しいのかなあ。よくわかりません。

一度、メーカーさんに聞いたのですが、呆れられてしまいました。

もしも、ご存知の方がおりましたらご一報いただけますでしょうか。

 

流動性の罠

※経済学の用語を検索して当ページにたどり着いた方は申し訳ありません。
他のページを参照いただくようにお願い致します。
間違っても、このページを基に、経済学のレポートなど書かないように。

雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫)

 

診察をしていると、様々な処方を見ることができます。
今回はそんなお話です。

ある昼下がりに80代の女性の方が娘さんと一緒に受診されました。
頭の湿疹を訴えています。

問診票を見ると、あれあれ?治療中ではありませんか。
お薬手帳も同時に確認すると、しっかりと、ローションで治療を受けていました。
しかも、飲み薬が3種類も出ています。

おやおやと思いながら診察を始めると、
頭の中が乾燥して、粉を吹いています。
そして、話によると、ぬってもぬっても落ち着かないと。
痒くて眠れないということですからよっぽどのことでしょう。

さてどうしようかと話を聞いていると、
「薬を塗った後に頭のなかが乾いてしまう」と言われました。
そこで、ピンときたので、薬を変えてみる事にしました。

塗り薬はあえて一段下のステロイドに変更し、
軟膏に変更。
飲み薬は全部やめてみました。

そして、「べたべたするけどしっかりとぬってね」とお話をして、
その日は終了。

 

その1週間後くらいでしょうか。
受診した彼女は開口一番
「よくなりました」と。

d(`・ω´・+)ャッタネ

 

さて、実はコレは「流動性の罠」と呼ばれるものです。
というか、今勝手に名前をつけました。

一般に、飲み薬は飲んだほうが効果が高い。
塗り薬は強いものの方が効果は高い。
と考える方は多いかと思います。

しかし、塗り薬にはもうひとつの問題があります。
それは「基材」の問題です。

「基材」と言ってもピンと来ない方も多いかと思います。
簡単に説明しましょう。
塗りすぐりには有効成分の他に、それを何に溶かしているかという話が常にあります。
その「何に」が基材なのです。
細かい成分云々は難しい話になるので、割愛しますが、
おおまかに基材はいくつかの種類に分けることができます。
軟膏、クリーム、ローションです。
(厳密にはヴァニシングクリームやら、スプレーやらo/wにw/oやらいろいろありますが、省略)

この、3種類の基材はそれぞれ性質が異なります。

一般に軟膏が一番ベタベタします。逆にローションはさらさらです。
したがって、塗り心地はローションのほうがいいのです。

しかし、皮膚によく残っているのは、軟膏が一番。
また、かぶれるリスクは軟膏が一番少なくなります。
また、塗りやすいものは乾きやすいという難点もあります。

 

つまり、今回、塗り薬を弱くしても逆に効果が出たのは、
基材を変更したからといえるでしょう。
べたつく基材で長い時間皮膚に接触していることが大事っだったわけです。

 

実は処方された外用薬の種類を見ることで、
皮膚科医はその先生の考え方まで知ることができます。
小児科や内科の先生に対して皮膚科医は軟膏基材の外用薬を出すことが多いです。

たとえ、患者さんからべたつく。とか、塗りにくい。とか言われても、
トラブルの少なく、汎用性のある基材を使用するわけです。
逆に、患者さんのお話を聞きすぎるあまり、
(聞くのが悪いわけではありません。何事も程度問題なのです。念の為に)
ローションやクリーム基材の塗り薬を処方し、
逆になかなか治らなくなってしまう。
これを「流動性の罠」と呼ぶわけですね。

ちなみに、経済学の流動性の罠とはこんなお話です。
・・・よく分かんない。むう。ちなみに高校の社会は日本史選択組でした。

 

 

最後に、そのおばあちゃんが、
「いままで一杯お薬を飲んでいたのは何だったんでしょうね」
と帰りぎわにぽつりと。
難しい問題です。